黒ワインと呼ばれる、深みのある濃厚な色合い
カオールは、フランスのボルドー地方に位置し、ガロンヌ川支流の一つであるロット川の流域に広がるワイン産地を指します。この地域で生産される赤ワインは、古くからブドウ栽培が行われており、紀元前3世紀末のガロ・ローマ時代にまでさかのぼります。カオールで造られるワインは12世紀にはすでに評判が高く、アキテーヌ公爵家のアリエノールと後のヘンリー2世の結婚式や、アヴィニヨン教皇ヨハネス22世やフランス国王たちの飲酒の際にも愛飲されたとされています。
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大西洋と地中海の両方の気候の影響を受けており、夏は暑く乾燥し、冬は寒く、昼と夜の気温差が大きいです。秋には南西風が吹き、ブドウの熟成を促進します。土壌は大きく2つに分かれ、一つは標高250〜350mの石灰岩の台地で、もう一つはロット川の段丘にある沖積土です。石灰岩の台地では、よりタンニンが豊富で長期熟成が可能なワインが生産されます。一方、川の段丘や斜面では、親しみやすく果実味豊かなワインが造られます。
主要品種は、この地域が原産地とされるマルベックで、70%以上の使用が義務付けられています。マルベックはこの地域ではコットやオーセロワとも呼ばれ、果実が小粒で果皮が厚く、豊かなタンニンと濃い色調のワインを生み出します。そのため、マルベック主体のカオールワインはしばしば「黒ワイン」と呼ばれています。
カオールの最も顕著な特徴は、その深みのある濃厚な色合いであり、この特徴から「黒ワイン」と称される由縁です。若いワインでは、ブルーベリーやプラムの果実の香りが際立ち、スミレやバラのような花の香りや、杉やインク、皮のような香りが認められます。一方で、同じくマルベックを主体とするアルゼンチンのワインと比較すると、カオールのワインはより果実味が豊かで濃厚な印象を与えます。アルゼンチンのマルベックは口当たりが良く、滑らかな印象があります。